令和6年度版「過労死白書」公表

2024年度(令和6年度)の状況をまとめた「過労死等防止対策白書」が公表されました。
過労死の定義については、簡単にまとめると
①業務における過重な負荷による脳血管疾患もしくは心臓疾患を原因とする
②業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による
となっています。

1 週労働時間60時間以上の雇用者
働き方改革の影響もあってか、減少傾向が続いています。
ただ、運輸業・郵便業、宿泊業・飲食サービス業、教育・学習支援業の割合が比較的高いです。

2 労災認定件数
脳・心臓疾患、精神障害とも上昇傾向であり、特に精神障害の伸びが顕著です。
特に精神障害については2023年度(令和5年度)に大きく請求件数が伸びていますが、この年労災認定基準の改正が行われたため、その影響と考えられます。

3 脳・心臓疾患事案
業務における過重な負荷により脳血管疾患又は虚血性心疾患等(以下「脳・心臓疾患」 という)を発症したとする労災請求件数は、令和2年度から令和4年度において減少したが、令和5年度に大きく増加し、令和6年度は1,030件と令和5年度より7件増加した。 業務災害に係る脳・心臓疾患の労災支給決定(認定)件数は、令和4年度以降増加傾向に あり、令和6年度は241件と、令和5年度より25件増加した。
なお、脳・心臓疾患では、運輸業、郵便業(道路貨物運送業)、自動車運転従事者の請求件数が多い傾向がある。(白書より)

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厚生労働省「過労死白書」(令和6年度版)より
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厚生労働省「過労死白書」(令和6年度版)より

4 精神障害事案

業務における強い心理的負荷による精神障害を発病したとする労災請求件数は年々増加 し続けており、特に令和5年度に大きく増加した後、令和6年度は3,780件と、令和5年度 より205件増加した。業務災害に係る精神障害の労災支給決定(認定)件数は、令和元年度以降増加傾向にあり、令和6年度は1,055件と、令和5年度より172件増加した。172件の増加は、令和4年度から令和5年度の173件の増加に次ぐ増加件数である。
2)精神障害事案に係る具体的な出来事別の割合(2012年度~2022年度)
・「(重度の)病気やケガ」は建設業が高い。
・「悲惨な事故や災害の体験、目撃」及び「同僚等から暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせ」は医療が特に高い。
・「仕事内容・仕事量の(大きな)変化」はIT産業や芸術・芸能分野が特に高い。
・「1か月に80時間以上の時間外労働」は自動車運転従事者や外食産業が、「2週間以上の連続勤務」は建設業が高い。
・「上司とのトラブル」、「パワーハラスメント」は教職員が高い
(白書より)

なお、業種別の労災請求件数上位には「社会保険・社会福祉・介護事業」「医療業」が入ってきている。

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厚生労働省「過労死白書」(令和6年度版)より
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厚生労働省「過労死白書」(令和6年度版)より

5 データから見えたこと
1)過労死等の労災請求件数の増加について
特に精神障害に係る労災保険給付の請求件数が年々増加し、平成22年度(2010年度)に比べて3倍以上となっている
・ 自殺事案はおおむね横ばいないし微増であるが、自殺以外の事案が 大幅増
・ 女性の事案が増加し、男性を上回る水準に
・ 業種別では、「医療、福祉」がトップであり、さらに令和4年度から令和6年度にかけて大きく増加
・ 出来事別の決定件数(支給・不支給)では、「対人関係」、「パ ワハラ」といった職場環境に関する出来事が令和4年度から令和6年度にかけて大きく増加

2)重点業種等の状況と取組について
・脳・心臓疾患事案の3年ごとの平均件数の推移を見ると、自動車運転従事者は、令和2年度から令和4年度の3年間は減少したが、依然として他に比べ件数が多い
・精神障害事案の3年ごとの平均件数の推移を見ると、医療と自動車運転従事者は大幅に増加。建設業は高止まりしている
・精神障害の発病に関与したと考えられる事象(出来事)は、重点業種等ごとに異なる傾向がみられる

ちなみに「重点業種」とは2024年に決定された「過労死等防止対策大綱」にて調査研究の重点対象とされているもので、過労死等が多く発生している又は長時間労働等の実態があるとの指摘がある職種・業種である自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業、医療、建設業、メディア業界、芸術・芸能分野のことを指す。

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