違法となる変形労働時間制について

今回は、違法となる変形労働時間制についてお届けしていきたいと思います。
本来の労働時間は
1日8時間まで
1週40時間まで(例外あり)
となっていますが、それ以外の労働時間でも適法となる場合があります。(例)1日10時間まで1週52時間まで 等)それを変形労働時間制といいます。

本来、変形労働時間制導入のためには、以下のような要件が定められています。
【例えば1カ月変形の場合】
①労使協定、就業規則その他これに準ずるものにより
②1か月以内の期間を平均して1週間の労働時間が法定労働時間を超えない範囲内で
③各週及び各日の労働時間を具体的に特定しておく

【労働基準法32条の2】(1カ月変形)

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、1箇月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が前条第1項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第2項の労働時間を超えて、労働させることができる

違法となるケースは以下のケースが多いです。

①就業規則や労使協定に定めがない
②変形労働時間制の総枠を超えている
③事前にシフトが決められていない
④労働パターン・組み合わせの法則・作成手続が規定されていない

【②変形労働時間制の総枠を超えている】

1カ月変形の場合
1月の日数 30日だと171.4時間
       31日だと177.1時間
という総枠が定められており、当然この枠内に労働時間を収める必要があるが、それを超えてしまっている場合がある

【③事前にシフトが決められていない】

変形労働時間制のもとにおいて、法定労働時間を超えることができるのは、あくまで「特定された週」及び「特定された日」とされているため

【④労働パターン・組み合わせの法則・作成手続が規定されていない】

就業規則により事前に始業時刻と終業時刻を明示するのではなく、
勤務割表によりシフトを決める場合には、労働者の予測可能性を担保する必要がある

要は、勤務割は、就業規則において、労働パターンを設定し、その勤務の組み合わせの考え方、勤務割表の作成手続や周知方法等を定め、これに従って決めなければならない

ある裁判例より①

就業規則において、勤務にかかるシフトパターンがすべて記載されておらず、現に原告が勤務していた店舗においては、店舗独自の勤務シフトを使って勤務割が作成されていることに照らすと、会社が就業規則により各日、各週の労働時間を具体的に特定したものとはいえないことから、労働基準法第32条の2が定める「特定された週」または「特定された日」の要件を充足せず、変形労働時間制は「無効」であると判断。
勤務シフトが一部例示的に載っているだけで、すべてのシフトが載っていないため、変形労働時間制の成立が否定された。
⇒被告側(会社側)はそのようなことは現実的には不可能と訴えたが、法の要請はそれでもすべて事前に定めておくこと、それができなければ、そもそも変形労働時間制は成立しないし導入しなければいいという判断。変形労働時間制はあくまで「例外」だから。

ある裁判例より②

就業規則では、1ヵ月単位の変形労働時間制を採用することを明記し、基本となる始業・終業時刻と休憩時間を定めているものの、法定労働時間を達成するために労働時間を短縮する日およびその労働時間などについて何らの定めがなく、会社が任意に決定・変更できる内容となっていたことから、労働者があらかじめ法定労働時間を超える日・週がいつとなるのか、またその日・週に何時間の労働をすることになるのかについて予測することが不可能だった。

少なくとも就業規則上、始業・終業時刻を異にするいくつかの労働パターンを設定し、勤務割がその組み合せのみによって決まるようにし、また、その組み合せの法則、勤務割表の作成手続や周知方法などを定めておくことが求められているとした。
そして、法定労働時間を超える日・週をいつとするのか、またその日・週に何時間の労働をさせるかについて、使用者が全く無制限に決定できるような内容となっている就業規則の定めは、労働基準法第32条の2が定める「特定された週」または「特定された日」の要件を欠き、「無効」であると判断された。
⇒変形労働時間制の導入にあたっては、各種規定が何故定められているかというと、ひとえに労働者側の予測可能性が担保されることが必要といった考えに基づく。

ある裁判例より③

稼働計画表により設定された労働時間の合計は、1ヵ月の所定労働時間に、あらかじめ30時間が加算されたもの(暦日数が31日の場合は207時間、30日の場合は201.25時間など)

変形労働時間制が有効であるためには、変形期間である1ヵ月の平均労働時間が1週間当たり40時間以内でなければならないが、会社の稼働計画表では、原告の労働時間は、1ヵ月の所定労働時間にあらかじめ30時間が加算されて定められていることから、1ヵ月の平均労働時間が1週間当たり40時間以内でなければならないとする法の定めを満たさないものとして、無効と判断された。

以上、違法となる変形労働時間制についてご紹介いたしました。

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