はじめに
「会社とトラブルになったけど、弁護士に頼むのはハードルが高い」
「裁判まではしたくないけど、このまま終わるのは納得できない」
そんなときに使えるのが、**“あっせん制度”**です。
多くの人が名前だけは聞いたことがあるけれど、
実際どういうものかは意外と知られていません。
“あっせん”とは、トラブルを「話し合いで解決」するための、
国が用意した公的な仕組みです。
第1章 “あっせん”は「裁判」ではなく「対話の場」
あっせんは、法律上「個別労働紛争解決制度」の一部です。
労働局や都道府県の労働委員会が運営しており、
誰でも無料で利用できます。
対象になるのは、たとえば――
- 残業代が支払われない
- 解雇・雇止めに納得できない
- パワハラ・セクハラを受けた
- 配置転換や降格などの不当な扱い
こうした「会社とのトラブル」全般です。
弁護士に頼まなくても、
書類1枚(申請書)でスタートできます。
多くの人が思うような“裁判のような緊張感”はなく、
**「中立の専門家が入って話をまとめる場」**というイメージに近いです。
第2章 仕組みをざっくり言うと、こうなる
1️⃣ 申請書を提出(労働局や都道府県労働委員会へ)
2️⃣ 相手(会社)に通知が届く
3️⃣ 双方が同席または書面で意見交換
4️⃣ あっせん員(第三者)が調整案を提示
5️⃣ 双方が合意すれば解決
これだけです。
費用はかからず、原則として1〜2か月で結果が出ます。
ただし、会社が「応じない」と言えば、その時点で終了。
強制力はありません。
それでも、応じる企業は一定数あります。
なぜなら、**「労働局が関与している」**というだけで、
会社にとっては大きなプレッシャーになるからです。
“あっせん”は、会社とあなたの「間」に立つ、いわば“調整の橋”。
第3章 どんな人に向いている制度?
あっせんは、「白黒をつけたい人」よりも、
**「早く前に進みたい人」**に向いています。
✅ 向いているケース
- 退職金・未払い残業など、金額が明確
- 「謝罪」より「支払い・書面確認」を求めたい
- 法廷までは行かずに“けじめ”をつけたい
❌ 向いていないケース
- パワハラ加害者の処分を求めたい
- 再雇用・復職など、関係性の修復を前提とする場合
- 会社側が完全に無視している
“あっせん”は、「対話を再開する制度」だと考えると分かりやすい。
第4章 「会社が応じなかった」ときの次の手
会社があっせんを拒否することもあります。
でも、それで終わりではありません。
その後の選択肢としては――
- 労働審判(裁判所)
- 弁護士相談・訴訟
- 労働組合による団体交渉的支援
特に、**“あっせんでの記録”**は次の手段に活きます。
どの主張をしたか、会社がどう対応したか――
その経緯が残ることで、後続の手続きがスムーズになります。
“あっせん”は終点ではなく、「次の行動の助走」になる制度です。
第5章 実際の現場から
ある40代の女性は、
契約更新を打ち切られ、退職を求められました。
弁護士費用の余裕はなく、
「何もできない」と思い詰めていたところ、あっせんを提案。
申請から1か月で会社が応じ、
未払い分の給与と解雇予告手当が支払われました。
本人はこう話してくれました。
「お金より、“私は間違ってなかった”と感じられたのが大きかったです。」
この言葉が、あっせんの本質だと思います。
制度は“戦うため”ではなく、“整理するため”にあるのです。
おわりに
あっせんは、弁護士を立てなくても使える「公的な対話の制度」。
しかも無料で、スピードも早い。
確かに、すべてが解決するわけではありません。
でも、「何もしないより確実に前に進む」ことはできます。
申請書よりも大切なのは、
“声を上げてみよう”という一歩。
その勇気が、働く人の明日を守る力になります。
