はじめに
「上司の言葉がきつい」
「人格否定された気がする」
「でも、これってパワハラなのかな…?」
こうした相談は非常に多いものの、
本人も会社側も “感情” で判断してしまう ため、話が進まなくなりがちです。
そこで重要なのは、
“性格”ではなく、“行為の基準”で判断すること。
厚生労働省はパワハラを
「行為」で判断するための6類型
を明確に示しています。
この記事では、
その6類型を「境界線」として使いながら、
あなた自身が判断できるレベルまで噛み砕いて解説します。
第1章 “性格がキツい=パワハラ” ではない
まず最初に整理しておくべきことがあります。
パワハラは、性格で判断してはいけない。
行為そのものが基準になる。
たとえば、
声が大きい人、感情表現が強い人、指導が厳しい人……
こうした“個性”だけではパワハラとは言えません。
ポイントはただ一つ。
✔「職務上必要な範囲を超えているかどうか」
怒鳴る・威圧する・否定するという“行為”が、
業務の必要性から逸脱しているかどうかで判断します。
言い換えると、
性格 × 行為 = パワハラかどうか
行為 × 業務との関連性 = パワハラかどうか
この視点がないと、
相談しても結論が出ないまま終わってしまいます。
第2章 厚生労働省が定める“パワハラ6類型”とは
パワハラかどうかは、
厚労省が示す「6類型」のどれに該当するかで判断します。
これが 境界線の“公式ルール” です。
① 身体的攻撃
- 殴る、蹴る
- 物を投げる
- 肉体的拘束
※ 一発アウト。業務上必要な理由は存在しない。
② 精神的攻撃
- 人格否定
- 侮辱、暴言
- 皆の前で晒す
- 長時間の叱責
※ 「業務指導」との境界線は“内容+時間+場所+言い方”。
③ 人間関係からの切り離し
- 無視
- 仕事の連絡を意図的に外す
- 必要な情報を与えない
※ “関係悪化”ではなく“業務に必要な情報を切る”かどうか。
④ 過大な要求
- 明らかにできない量の仕事を与える
- 過剰なノルマ
- 時間的に不可能な締め切り
※ “本人の能力に応じない要求”はパワハラになりうる。
⑤ 過小な要求
- 能力を意図的に低く扱う
- 転記作業だけ、掃除だけなどの単純作業しか与えない
- 仕事を取り上げる
※ 「懲罰的に仕事を外す」は典型的パワハラ。
⑥ 個の侵害
- プライベートへの過度な介入
- 交際・結婚・家族のことを詮索
- 宗教・政治への強要
※ “仕事に関係ない領域”を踏み込んだらアウト。
以上のどれかに当てはまったら、
パワハラとして認定される可能性が極めて高いです。
第3章 境界線を引く3つの判断基準
6類型は「分類」ですが、
実際の相談ではもっと細かい基準で判断します。
✔ ① 業務上必要か?
→ 指導・注意・改善要求は業務上必要。
→ 人格否定・暴言・威圧は必要性なし。
✔ ② 手段として適切か?
「叱る必要はあったが、怒鳴る必要はあったか?」
ここが境界線。
✔ ③ 継続性があるか?
単発より、
- 繰り返される
- 長時間
- 逃げられない状況を作る
ほどパワハラの強度は上がる。
第4章 “線引きが難しい”グレーゾーン例
現場で最も判断が難しいのがグレーゾーンです。
● グレー①:厳しい口調
→ 内容が業務的であれば指導。
→ 人格否定なら精神的攻撃。
● グレー②:仕事量が多い
→ 一時的で全員に同じなら業務要請。
→ 1人にだけ、継続的、能力に不相応なら過大要求。
● グレー③:配置転換
→ 業務上の必要性が説明できれば適法。
→ 懲罰・嫌がらせ目的なら過小要求・切り離し。
グレーゾーンこそ、
「行為」×「必要性」×「継続性」で判断します。
第5章 パワハラかもと思ったときの“相談ステップ”
感情のままに訴えると、
「思い込み」「好き嫌い」で処理されかねません。
そこで重要なのが、
“行為の記録” を残すこと。
ステップ①:メモを残す
- いつ
- 誰が
- どこで
- 誰の前で
- 何を言った(行為)
- どんな影響が出たか
※ 行為ベースが最重要。
ステップ②:社内窓口に相談
総務・人事・ハラスメント窓口へ。
必要なのは “感情” ではなく “事実” です。
ステップ③:会社が動かない場合は“外部”
- 労働局(均等室)
- 労基署(労働条件が絡む場合)
- 社労士(職場調整・事実整理)
- あっせん(解決を促す制度)
第6章 会社とケンカしなくても、権利は守れる
パワハラを相談するとき、
多くの人が「会社とケンカになる」と不安に思います。
しかし実務では、
“行為の事実”で淡々と整理するほうが、
会社側も受け入れやすい
という現実があります。
「性格の問題です」と言われたら、
「問題にしているのは行為です」と返せばいいのです。
おわりに
パワハラは“感情の問題”ではありません。
怒りっぽい上司=パワハラではなく、
行為そのものが基準 です。
厚労省の6類型という明確な“線”があるからこそ、
あなたは迷わず相談できます。
問題はあなたの性格ではなく、
相手の“行為”です。
感情ではなく、行為で判断する。
それが、あなた自身を守る一番の方法です。
