脱退したアイドルに違約金1千万円請求 労働者と認め「無効」の判決

という記事が出ました。まだ判決文なども読んでいないので、簡単なことしか書けませんがまとめてみたいと思います。

構成はシンプルです。

まず、訴えられた側である元アイドルが労働基準法上の「労働者」であるかどうかというポイントです。
一般的に、芸能人は形式的に労働契約を結んでいるケースはほぼないかと思います。
よって、「個人事業主」ということにまずはなります。

ただし、労働法の世界では、最終的にその人が労働基準法上の「労働者」であるかどうかは、新聞記事などにもあるとおり、「実態」で判断します。これをよく「労働者性」があるかないか、という表現を用いるのですが、

その基準となる要素は以下のとおり、主に2点です。

1点め「指揮監督下の労働」といえるか
(ア) 仕事の依頼,業務従事の指⽰等に対する諾否の⾃由の有無
(イ) 業務遂⾏に当たっての指揮監督の有無
(ウ) 勤務場所および勤務時間に関する拘束の有無
(エ) 労務提供の代替性の有無 … などから判断。

2点め 報酬が労務対償性を有するか否か

< 補強要素>
(ア) 事業者性(独⽴して事業を営む⾃営業者としての性質)を有するか
(イ) ある特定の相⼿との間に専属性が認められるか
(ウ) その他,採⽤の過程,公租公課の負担関係

この要素を、「実態」と照らし合わせてみて司法判断が下ったものとみます。
新聞記事からすると、1点めの(ア)諾否の自由がなかった、
月6~16万円の定額報酬が払われていたことから、2点めの「報酬=労務対償性アリ」
の2点は少なくとも認定の材料となったのかもしれません。

次に、労働基準法上の労働者と認定されたわけですので、当然、形式的にはその契約が業務委託契約であろうと、法的には労働契約とみなされますので、労働基準法上のルールが適用になります。

すると、労働基準法第16条には、
「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」
と定められているため、今回のケースは「違約金」と判断され、労働基準法は「強行法規」ですので、マネジメント会社と元アイドルとの間の違約金を定めた条項は「無効」と判断されるという結論が導き出されます。

現実的には、いざ司法の場で争えば「労働者性」アリと判断される契約が多いと予想します。
今回の場合は、元アイドル側が訴えたのではなく、「訴えられた」というケースですので、なかなか出ない司法判断が下ったものと思います。

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