「病気で休む=自己都合退職」ではない――休職・解雇の誤解

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はじめに

「体調を崩して会社を休むことになった」
「長く休んだら、もう辞めるしかないですよね」

――そんな言葉を、これまで何度も聞いてきました。

でも、はっきり言います。

病気で休むことは“自己都合退職”ではありません。

会社を辞めざるを得なくなったとしても、
退職理由の扱い方次第で、あなたの権利は大きく変わります。


第1章 “自己都合退職”と“会社都合退職”の違い

退職には、大きく2種類あります。

◆自己都合退職
自分の意思で辞める
約1〜3か月の給付制限あり
最大150日

◆会社都合退職
会社の都合で辞める(解雇・契約満了など)
待期7日後すぐ支給
最大330日

病気で休職し、**「働けないから退職せざるを得なかった」**場合、
それが“自己都合”か“会社都合”かは、本人の意思だけでは決まりません。


第2章 「休職」と「退職」は別の話

まず理解しておきたいのは、

休職=退職ではないということ。

休職とは、「今は働けないけれど、治療すれば戻れる見込みがある」状態で、
雇用関係は続いています。

多くの会社では「休職規程」があり、
その期間(たとえば3か月〜1年)は会社があなたの席を確保しておく義務を負います。

この期間に受けられる代表的な制度が、健康保険の「傷病手当金」
給与の約3分の2が最長1年6か月まで支給されます。

つまり、「働けない」ことと「辞める」ことは別の話。
休職中は“治療と生活を支える仕組み”が用意されています。


第3章 「会社に迷惑をかけるから辞める」は誤解

真面目な人ほど、「会社に迷惑をかけるくらいなら辞めよう」と考えがちです。

でも、病気やケガは労働者の“責めに帰すべき事由”ではないため、
会社が一方的に「自己都合扱い」で退職処理するのは不適切です。

もし、

  • 医師の診断書を提出して休職していた
  • 復職が難しいと判断された
    といった経緯があれば、
    **実質的には“会社都合退職”**として扱われる可能性が高いのです。

「自分で辞めます」と言ってしまう前に、
まず“制度的な位置づけ”を確認してください。


第4章 「休職満了で退職」になったとき

一定期間休職しても復職できない場合、
会社は「休職期間満了による退職」とすることがあります。

このときの扱いは注意が必要です。

形式上は「自己都合退職」として処理されるケースもありますが、
実際には“会社都合に近い扱い”として
ハローワークで変更(異議申立)できる場合があります。

その際に重要なのは、

  • 医師の診断書や休職期間の記録
  • 会社とのやりとり(メール・文書)
    などの客観的証拠。

社労士や労働局に相談すれば、
「会社都合扱い」に修正できるケースも少なくありません。


第5章 「解雇」された場合のポイント

病気を理由にした解雇は、法的には有効になる場合、ならない場合とがあります。

  • 治療によって回復の見込みがある場合
  • 業務に支障がない範囲で就労可能な場合

こうしたときに解雇するのは、違法の可能性があります。

「病気だから仕方ない」と思い込まず、
**“解雇の合理性”**を確認することが大切です。


第6章 退職後も続く“社会保険の支援”

退職しても、すぐに全ての保障がなくなるわけではありません。

  • 健康保険の「傷病手当金」は、退職後も条件を満たせば継続支給
  • 雇用保険の「失業給付」は、治療後に再就職活動ができる状態で申請可
  • 住民税・健康保険料なども、収入減に応じて軽減あり

つまり、“退職=終わり”ではなく、
“支援制度の切り替え”が始まるだけ。


おわりに

「病気で休むなんて申し訳ない」
「もう戻れないから自己都合でいいです」

そう思う必要はありません。

制度は、“責めるため”ではなく、“支えるため”にあります。
あなたが正しく権利を理解し、必要な制度を使えば、
働けない期間も「人生の一部」として守られます。

病気で休むことは、負けではない。
それは、立ち止まりながらも“生きる力を取り戻す”過程です。

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