内示や面談で、こう言われることがあります。
「今回の配置は、あなたが想像していたものとは違うかもしれませんが」
「当面はこの業務をお願いしたい」
その瞬間、頭に浮かぶのはこの感情です。
- 期待していた仕事ではない
- キャリアが後退した気がする
- 評価が下がったのではないか
ただ、この問題は
感情だけで判断すると、見誤りやすい。
法的に見ると、
「期待していたポジションではない仕事」には
いくつかの種類があります。
① まず整理すべきは「降格」なのかどうか
一番最初に確認すべきなのは、これです。
役職や等級は変わったか。
- 役職が外れた
- 等級が下がった
- 賃金が下がった
これらがある場合、
法的には降格の問題になります。
降格は、
会社が自由にできるものではなく、
- 就業規則の根拠
- 合理性
- 手続の相当性
が必要になります。
一方で、
これらが何も変わっていない場合、
法的には「配置」「業務命令」の問題として整理されます。
② 「期待していた」という感覚は、法的にはどう扱われるか
ここが一番誤解されやすい点です。
残念ながら、
「自分はこの仕事をすると思っていた」
という期待そのものは、法的権利ではありません。
- 面接での説明
- 上司の発言
- 過去の慣行
これらは考慮要素にはなりますが、
それだけで
「その仕事を与える義務」が生まれるわけではない。
つまり、
期待していた
= 会社が必ずそうしなければならない
ではありません。
③ それでも問題になる配置とは何か
では、
「期待と違う」だけなら全てOKか。
そうではありません。
次のような場合、
配置命令として問題になりやすくなります。
- 明らかに能力・経験とかけ離れている
- 専門性を意図的に使わせない
- 雑務・単純作業ばかりになる
- キャリア形成を著しく阻害する
- 他の社員との扱いに合理的説明がつかない
ここで重要なのは、
不満かどうかではなく、合理性があるかどうかです。
④ 「左遷」と感じても、法的には左遷でないことが多い
相談現場でよく聞く言葉があります。
「これは左遷ですよね?」
しかし、
法的にいう「左遷」はかなり限定的です。
- 地位・待遇が実質的に下がる
- 社会通念上、不利益が明らか
- 業務上の必要性が乏しい
これらが重ならない限り、
単に
“期待と違う仕事”であるだけでは左遷とは言えません。
ここが、
本人の感覚と法のギャップです。
⑤ 会社がよく使う論理と、その弱点
会社側は、よくこう言います。
「会社の判断です」
「適材適所です」
「総合的に考えました」
これ自体は、
直ちに違法ではありません。
ただし、
- なぜあなたなのか
- なぜ今なのか
- 他の選択肢はなかったのか
これを説明できない場合、
合理性は徐々に弱くなります。
「説明できるかどうか」は、
後から必ず効いてきます。
⑥ やってはいけない受け止め方
この場面で、
多くの人がやってしまうのが次の反応です。
- 感情的に抗議する
- すべてを諦めて投げやりになる
- 「従います」とだけ言って何も残さない
どれも、
後の選択肢を狭めます。
⑦ 実務的に重要なのは「理由を聞くこと」
まずやるべきことは、シンプルです。
理由を聞く。
- なぜこの業務なのか
- 期間はどれくらいか
- 将来的な位置づけはどうなるのか
これを
感情抜きで確認するだけで、
それが
- 一時的な配置なのか
- キャリア上の調整なのか
- 別の意図があるのか
が見えてきます。
⑧ 「期待外れ」でも受け入れた方がいいケース
中には、
法的にも実務的にも
受け入れた方が無難なケースもあります。
- 明確な業務上の必要性がある
- 期間限定である
- 将来の配置が示されている
- 条件(勤務地・待遇)は変わらない
この場合、
争点にしても得るものが少ない。
⑨ 「期待外れ」が続くときに考えるべきこと
一度ならともかく、
- 何度も同様の配置が続く
- 説明が毎回曖昧
- 将来の話が一切出ない
この状態が続くなら、
それは
個別の配置ではなく、会社の評価の問題です。
この段階で初めて、
「この会社でのキャリア」を
冷静に再設計する必要があります。
⑩ 最後に──問題は“期待外れ”そのものではない
このテーマで一番大事なのは、ここです。
問題は、
「期待していたポジションではないこと」
そのものではありません。
- なぜそうなったのか
- どこへ向かうのか
- 説明があるのか
それがないまま、
ただ命じられること。
そこに、
労使問題の芽があります。
仕事は感情だけでは測れませんが、
感情を無視していいわけでもない。
法的整理は、
「我慢するかどうか」を決めるためではなく、
どう判断するかを誤らないためにあります。
