ある日、上司や人事からこう言われます。
「ちょっと雑談なんだけどさ」
「最近どう?仕事、楽しい?」
「将来、どんなこと考えてる?」
一見、
よくある世間話のように聞こえます。
でもこの雑談、
後から振り返ると“始まっていた”
というケースが、実は非常に多い。
これは偶然ではありません。
① 退職勧奨は、法律的にかなり扱いが難しい
まず前提として。
会社は、
簡単に「辞めてほしい」と言えません。
なぜなら、
- 強要になれば違法
- パワハラ認定される可能性
- 解雇と誤解されるリスク
があるからです。
だから会社は、
最初から本題を言わない。
その代わりに、
“空気”から作り始めます。
② 雑談から始める理由は「証拠を残さないため」
雑談っぽい退職勧奨の最大の特徴は、これです。
記録に残らない。
- 議事録を取らない
- 書面を出さない
- 明確な表現を避ける
「ただの会話」
「本人の考えを聞いただけ」
そう言える余地を、
常に残しています。
③ 典型パターン①「心配している風」
よくある入り方です。
「最近、ちょっと元気ないように見えて」
「無理してない?」
「体調とか、大丈夫?」
一見、
完全に“善意”です。
でもここでの狙いは、
- 本人が弱音を吐くか
- 自己否定的な発言をするか
- 辞めたい気持ちを口にするか
こちらから言わせること。
「本人が言った」という形を作るためです。
④ 典型パターン②「将来の話」
次に多いのが、これ。
「5年後、どうなってたい?」
「この会社でやりたいことって何?」
これ自体は、
違法でも不当でもありません。
ただし、
- この質問が
- 特定の人にだけ
- 繰り返し行われ
その後に、
「その将来像、うちでは難しいかもね」
と続くなら、
退職勧奨の導線に入っています。
⑤ 典型パターン③「他社・外の世界の話」
かなり分かりやすい例です。
「最近は転職する人も多いよね」
「外で活躍してる元社員、知ってる?」
これは、
“辞めても大丈夫”というイメージ作り。
- 辞める=失敗
- 辞める=問題
という心理的ハードルを、
雑談で下げに来ています。
⑥ 典型パターン④「否定しない」
意外かもしれませんが、
退職勧奨の初期段階では、
強い否定はしません。
- 怒らない
- 詰めない
- 叱らない
なぜなら、
辞めさせたい相手を
刺激する必要がないから。
むしろ、
「あなたの人生だから」
「無理しなくていい」
という言葉が出てきたら、
要注意です。
⑦ 本題は、何度か雑談した“あと”に来る
最初の雑談では、
決してこう言いません。
「辞めてほしい」
でも、
- 雑談 →
- 雑談 →
- 雑談 →
- ある日「選択肢」の話
という流れで、
「今後について、いくつか選択肢があると思っていて」
と来ます。
この時点で、
話はかなり進んでいます。
⑧ 言われた側がやりがちな間違い
この段階で、
多くの人がこう思います。
- まだ雑談だから
- 深読みしすぎかも
- 気にしなくていい
でも実務上、
「雑談っぽい退職勧奨」は後戻りしません。
むしろ、
こちらが軽く受け止めるほど、
会社は進めやすくなる。
⑨ 雑談かどうかを見極めるポイント
次の点が重なっていたら、
雑談ではありません。
- 面談が定期的に入る
- 人事が絡み始める
- 業務の話が減る
- 評価や将来の話が増える
- 記録は一切残らない
これは、
**退職勧奨の“準備段階”**です。
⑩ 最後に──雑談の正体は「責任回避」
なぜ会社は、
こんな回りくどいことをするのか。
理由は一つです。
責任を取りたくないから。
- 解雇とは言いたくない
- 強要にもしたくない
- でも辞めてほしい
その矛盾を解決する方法が、
“雑談っぽい退職勧奨”です。
問題は、
雑談かどうかではありません。
その雑談の“向き”がどこを向いているか。
そこを見誤らないことが、
一番の防御になります。
